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建築家トップ > コラム > 第4回 断熱とエネルギー効率 > 断熱とエネルギー効率

第2回 光と風を取り入れる
・・・断熱とエネルギー効率・・・
天野秀一 建築研究所 天野秀一

断熱にはそれを施す部位によって外断熱・充填断熱・内断熱の三つに分けるこ とが出来ます。鉄筋コンクリート(RC)造の建物でいえば、コンクリートの外壁(構造躯体)の屋外側で断熱するのが「外断熱」、室内側で断熱するのが「内断熱」というわけです。「充填断熱」は日本の住宅に多い木造在来工法の
従来から行われていた断熱で、柱と柱の間にグラスウール等の断熱材を詰め込む工法です。木造でも柱の外側で断熱する「外張り断熱」が最近増えてきましたが、これは大きく見ると「外断熱」ということになると思います。

近頃は、断熱といえばすぐに「外断熱」の話題がでるほど、一般の方たちにもその工法に対する関心が広がっているように思います。他の断熱工法にも良い面はあるのですが、性能という面から見れば「外断熱」に分があるようです。
外壁(構造躯体)の外側で断熱することのメリットは以下の2点です。
A. 外壁の温度が常に室温に近い
→ A-1. 室内側に結露が生じにくい
→ A-2. 一度暖めた(冷やした)室内の温度は下がり(上がり)にくい
B. 外壁が外気(温度・雨・大気汚染等)の影響を受けにくい
→ B-1. 外壁の耐久性が向上
A-2による冷暖房エネルギーの節約(省エネ)という観点から、欧州(特に北欧)では国をあげて盛んに「外断熱」工法が進められています。欧州と日本の気候の違いですが、たとえばベルリンの夏の最高気温/最低気温(共に平均)は24℃/16℃で、冬のそれは6℃/-11℃です。一方、東京の夏は32℃/26℃、冬は11℃/3℃です。このことから寒さの厳しい欧州(特に北欧)では主に冬の断熱、高温多湿の日本(寒冷地以外)ではおもに夏の断熱、という働きが期待されます。またA-1・ B-1に関しては、建築の品質にかかわる大切なことです。このように、「外断熱」は性能面で見れば大変優れた断熱工法といえます。

断熱は外壁だけでなく、窓にも必要です。一般的に使われる3〜5o厚のガラスでは、そこから熱が出入りするので、大きい窓があればいくら「外断熱」を完璧にしても意味がありません。またガラスやサッシが結露してしまい、それが建物に悪影響を及ぼすこともあります。外壁を「外断熱」したなら、ガラスは出来れば断熱性の高い複層(ペア)ガラスにしたほうがいいと思います。さらに可能ならば、サッシも断熱サッシにした方がいいでしょう。

断熱と共に、エネルギー効率を良くするには「気密」ということが重要になります。いくら効果的な断熱をしても、隙間があいていればそこから熱が出入りします。ですから気密性を高くして熱損失を出来るだけ小さくしなければなりません。

気密性を高くすると室内の温度は一定しますが、汚れた空気が滞ります。これではとても快適とはいえません。これを清浄化するには、機械換気で汚れた空気を排出して新鮮な外気を取り入れなければなりません。そしてそれを恒常的にするのです。いわゆる24時間換気と言われるものです。取り込む外気は、室温に近づけて取り込む換気扇が普及しているため、熱損失の心配はほとんどありません。

断熱、気密、そして換気。これで完璧かといえば、実はまだエネルギー効率を悪くするものがあるのです。それは、窓から入る日射です。暑い日本の夏に「外断熱」で外壁を防御しても、窓から差し込む日射は拒めません。複層(ペア)ガラスのサッシも断熱性能はありますが、日射を遮るものではありません。断熱、そして気密性の高い部屋は、それらがない部屋よりも日射による室温の上昇が高いと言われています。カーテンを閉めるか、ブラインドを閉じるかしても、ガラスを通して一旦室内に日射が入り込み、そこに熱がたまって室温を上げてしまいます。この対策は、日射を遮る庇や軒、あるいは窓の屋外側にブラインド等の日除けをつけるしかありません。

さて、住宅においては、誰しも「快適」な暮らしをしたいと思っています。
「快適」に暮らすには、これまで述べた断熱、気密、換気、日除けを満足していればいいのでしょうか。「快適」に暮らすための基準や要素は人によって様々です。また、「効率」や「性能」が、必ずしも「快適」に結びつくものではありません。例えば、オートバイクの好きな人は、それを家の中に入れ、ガソ
リンの匂いが家中漂っていても平気です。その人にとってはそれが「快適」なのです。南向きの広い部屋より、狭くて暑い小屋裏部屋を好む人もいます。わたし自身のことをいえば、家では夏でもエアコンや扇風機は使わず、団扇(うちわ)だけで過ごしています。冬は対流式の石油ストーブをつけますが、部屋の出入り口は閉めずに開け放っています。部屋に関しては北向きの方が落ち着けるので好きです。わたしにとって、それが「快適」なのです。これらの例はなにも特殊なことを言っているのではありません。「効率」とか「性能」といった一義的な価値観に流される人が多いことに疑問を持っているだけです。
完璧な断熱と高いエネルギー効率を要求する人がいてもいいと思う反面、自然なりに生きていくという考えの人がいてもいいと思うのです。自分にとって本当に「快適」な暮らしとはどういうことか、時にはそれを見つめなおすことも大切なことではないでしょうか。その人に合ったその人らしい住宅が、その人
にとって「快適」でいい住宅であるとわたしは信じています。

 
 
天野秀一 建築研究所 http://www.sa-ra.biz/
 
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