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建築家トップ > コラム > 第9回 リフォームと新築の境目はどこ? > 建て替えないでリフォームにする理由

第9回 リフォームと新築の境目はどこ?
・・・建て替えないでリフォームにする理由・・・
天野秀一  天野秀一建築研究所

住宅のリフォームが大流行(おおはやり)です。市場規模にして 7兆円あり、このまま成長すると、5年後には10兆円も夢ではないと言われています。建築業界は、構造的な不況からなかなか抜け出せないでいますが、ことリフォームに限っては別のようです。
さて、建て替えを含む新築がふるわないのに、リフォームがこれほどもてはやされる理由はなんでしょうか?
いくつか、わたしが思いついたものをあげてみましょう。

(A) 仕方ないから、リフォーム

要するに、建て替える経済力がない、ということです。消極的というか、致し方ない選択です。お気の毒に、と言うほかありません。
60年代の高度成長期から、間にオイルショックはありましたが、90年のバブル経済期まで、日本経済が右肩上がりの成長していたときは、それに同調してわたしたち国民ひとり一人の経済力も右肩上がりでした。
しかしバブル経済崩壊後の長期的な不況、そしてそこから生じた貧富の二極化は、ほとんどが中流意識といわれた国民の意識を大きく変えました。
リストラや会社の倒産で今現在お金に余裕のないひとだけでなく、今は何とか生活できていても将来の身分が保証されていないため、新築に必須の長期ローンを組めない、あるいは組む決心がつかないひとがたくさんいるのです。これはローンの資金で家を建てることが一般的な日本では、新築にとって致命的なことなのです。
そこで、将来景気が良くなるまで、とりあえずリフォームで我慢するか、となるのです。

(B) 建て替える必要がないから、リフォーム

たとえば地球に優しい省エネ生活をしようとしても、昔の家の断熱性能はあまりよくありません。建て替えて高気密・高断熱住宅にすればいいのですが、熱の出入りが激しい窓ガラスを断熱性の良い複層(ペア)ガラスに取り替えることで、ある程度の断熱性能の向上が期待できます。
また、高齢者あるいは身障者のいる住宅をバリアーフリーにするのも、今ある建物の段差を解消する建材や装置、それに手摺やすべり止めといった部材が数多く開発されています。
このように今では、現状に少し手を加えるだけで住宅の性能や使い勝手を改善する建材や装置、あるいは技術があり、なにも建て替えなくとも充分対応できることがあるのです。

(C) 誇り高き、リフォーム

昔はそうでなかったと信じたいのですが、わたしが物心ついた高度成長時代は、「新しもの」や「新しくする」ことに価値がありました。またそうすることで消費が拡大し、経済が成長したのでしょう。
新しいものが次々出回り、まだ充分使えても相対的に古くなってしまうため。人目もあり、新しいものに買い替えざるを得ない状況だったのです。住宅でいえば、建て替えせずにリフォームで済ませていたら、「ケチ」とか「貧乏くさい」と揶揄されかねない(少し大げさですが/笑)、という具合です。
建築業界は当たり前のように「スクラップ・アンド・ビルド」していました。もしかすると、自分たちは良いことをしている、と社会的使命に燃えていたのかもしれません。
しかしそのような勇ましい価値観も、70年代になると公害とオイルショックで反省を迫られたのです。
そのかいあってか、今は、良いものを大切に長く使う、という価値観が一般的に認知されています。なかには、ブランド物を買う口実にするひともいます。(笑)
また。汗水たらし骨身を削って働いた代償としての家は、自分の分身でもあり、そう簡単に壊して建て替えることは、心情的にもできないのです。
ですから、このような価値観をもつひとはリフォームに誇りを持っていますし、維持管理も行き届き、家を大切に使います。

(D) 自分なりにできる、リフォーム

家並みを通り抜けて毎日通勤・通学していても、その建築(家)を意識しているひとはほとんどいないのではないでしょうか。一般のひとにとって、建築は空気のような存在です。建築家や大工さんなど建築に携わるひとだけが、この建築のここは○とか、あそこは×とか思いながら街を歩いているのです。
しかし最近、建築、特に住宅建築が注目されてきました。本屋さんに行けば住宅関連の雑誌が平積みされている状態で、人気があります。テレビでも、風変わりな家を紹介したり、リフォームする前と後の変化をドラマチックに見せる番組があり、視聴率もいいようです。それを批判的にとらえるひともいるのですが、ぼくはいい傾向だと思っています。
どのようなことでも、まず興味を持たなければ始まりません。興味を持てば知識もつき、自分の家のあそこはああしたいとか、こうはできないか、などといろいろ考えて工夫することが楽しくなってくるのです。
初めは部屋の模様替えから入るのですが、リフォームはその延長にあるといえます。建て替えとなると少し手ごわいのですが、リフォームなら日々生活し使い慣れた家を自分なりにあれこれ工夫することができます。

(E) 道楽としての、リフォーム

不景気だと言っても、今の日本の生活水準はやはり高いです。共働きが一般化したため、ひとり当たりの所得は低くとも二人合わせれば「そこそこ」になり、多少「経済的な余裕」ができます。
「経済的な余裕」は、ひとに「心のゆとり」をもたらします。
また学校を卒業して社会に出ても、専門学校や英会話教室、あるいは大学院に社会人入学したりと、それなりの「知識欲をもつ」ひとがふえています。
そして、週休 2日が一般化し、「時間の余裕」ができました。
「経済的な余裕」、「心のゆとり」、「知識欲」、「時間の余裕」
これらが満足していると、ひとはなにかと「遊び心」が出てきます。家を建て替えるのは人生の一大事ですが、手ごろなリフォームならこの「遊び心」でできてしまうのです。
自分で建築を勉強し、その成果をリフォームで発揮するのもいいでしょう。たとえ失敗しても、リフォームなら比較的小さい損失ですみまし、何回もチャレンジすることもできます。
「普請道楽」とむかしは言いましたが、これにならえば「リフォーム道楽」と言えるでしょう。

建て替えないでリフォームにする理由は、他にもいろいろあるでしょう。
たとえば、法的な規制で建て替えがままならないとか、建て替えることはできても現状より狭くなってしまうという場合もあります。あるいは、街並み保存といった外観の制約で内部のリフォームしかできないこともあります。
いずれにせよ、リフォームは「建築」を身近にしてくれ、「手をつけてはいけない」ものから、「手をつけたほうが楽しい」ものへ誘(いざな)ってくれるのではないでしょうか。
われわれ建築家からリフォームをみれば、自己完結的ではなく、継承という意味で、「連歌」に通じる知的好奇心をくすぐってくれるものとして、大変面白いものであると言えるのです。

 
 
天野 秀一   http://sa-ra.biz
 
 
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