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実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

構造と意匠演出のからみあい

ガウディは”通常へつらいというのは相手と不和にならないために本来の事実を言わない事である”としている。
事情に応じて話し方を考えるという事になるのだろう。

半地下ポーチから実測を始める。
そこには階段があり、作業のスタート地点とした。
このポーチだけなら実測はできると意気込んでいたが、作図の完成予定は考えていなかった。このポーチの実測を進める上で、次第に不思議な構造に気がついてくる。文献による当時の逆さ吊り構造実験模型(polifunicula)の模型写真をベースに、ガウディ当時の構造体との関連性を検討し始める。そしていつのまにかスラブにある梁までに至る。
通常の天井構造とは異なり、内側に垂れ下がるようなスラブとなっていることに気がつく。視覚的に、今にも崩れてきそうな妙竹林な気分にもさせる、中年腹のような膨らみのあるスラブとなっている。

木の樹冠にも相当するようなそのスラブには、ところどころ色違いの十字架と三角形にカットされた煉瓦の肌を見せている。そして煉瓦造の丸柱から枝分かれするように煉瓦造の梁が見られる。その所々にGとCのイニシャルが嵌められている。勿論Colonia Gellのイニシャルである。
それを支える煉瓦の梁やスラブ面に貼付けられた十字架、その色のバリエーションと途中で切られた柱頭部分。
私はこれらの意味が気になった。特に煉瓦造の柱頭部だけが残された柱の跡が気になった.

このポーチの上にある教会へのアクセスとなる階段、その階段を支える煉瓦の柱のどれもが、植物的なテクスチャーを表現した構造体ではないだろうかと考え始めた。

たんなる構造的改革だけではなく、意匠的演出の仕方にまで工夫が凝らされているのである。
他に花びらのようなステン・ドグラスも見られる。がこれらの建具としての細工は「流石ガウディ」と云いたくなるほどの細工である。

世界でもっと古いステン・ドグラスは404年のイスタンブールのサンタ・ソフィア寺院のガラスとされているが、実際にはその嵌め込まれたガラスはステンドになっていない。
ところがドイツのヘッセン州のロルッシュ修道院は9世紀のステン・ドグラスとしてもっとも古いとされている。
そして原型をとどめる最古のステン・ドグラスは12世紀に作られたドイツ、バイエルン州のアウグスブルグ大聖堂の5人の予言者達だとされている。
一方で11世紀のフランス、パアティエのサン・ペドロ寺院の磔刑などや、パリのサンデニのバシリカ教会の少年キリストなども挙げられる。
いずれにしろフェニキア人によるローマン・ガラスが初めとされている。

通常ステン・ドグラスというと色ガラスを鉛の枠の中に嵌め込んで模様を作るのが基本とされているが、ガウディの場合このステン・ドグラス構造本体に細工をするのである。
その細工を始めるのがマジョルカ大聖堂のステン・ドグラスである。
この細工では、色ガラスを重ね合わせて任意の色を作り出す。通常の着色の際に求める色を混合して色を作り出すという作業を、色ガラスの組み合わせで作り出す手法である。
そのために、色によっては薄い部分や厚いガラスの部分があったりする。
それを繋げる鉛も当然一定ではない。
まさに職人泣かせのステン・ドグラスであったということは当時のエピソードからも伺える。

   
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