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実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

時を超え距離を超えて、人の縁は繋がる

不思議な事が起きるのは世の常である。むしろ「思いがけない事」として理解すると、それまでの自分の世界にはなかった事が、時間と経緯によって周囲も動きだす出来事なのだという解釈ができるのだが。

その思いもかけていなかったことがある日突然おきる。
私を尋ねて来た人との話によると、エル・カプリチョは既に1991年に日本の企業に売買され、其の新たな所有者の依頼で管理をしている人が、現地に長く住んでいる日本人女性Mさんであることがわかった。
そのカンタブリア信用金庫財団のディレクター パジェット氏が彼女の紹介できたと云うのである。

そういえば以前に、突然エル・カプリチョのMさんから電話があり紹介を受けた記憶があったが、まさかと思ったくらいである。
それでもディレクターは、訪問の趣旨を説明してくれた後、本気で大学の資料を預けていった。
そこでようやく「これは本気なのだ」と納得した。
数日後、財団に連絡して是非現地を調査したいという連絡をすると、素直に了解してくれた。
勿論のそのときには支度金も準備された。
私の友人で若い建築学生ジョルディ君をつれて現地に出向いた。
予め文献を調べてみると、カンタブリア大学の建築は、ガウディの先生であるホワン・マルトレールの計画による建物で、仕上げをドメネック・モンタネルがしていることもわかった。それよりも、その工事現場をエル・カプリチョの現場を管理していた建築家でガウディの同級生であったクリストバル・カスカンテが管理していたのだ。

その下調べをしていたおかげで、現場での調査は単に傷んでいる所だけではなく装飾や建築の納まり具合まで見ることになった。
通常なら年月を経てのダメージだけを管理するところだろうが、私は建築全体の様式や詳細を確認することで、その重要性とその価値をみいだすことができた。しかも壁画を担当しているのはジョワン・リモナ(1860-1926)である。
彼はカタルニア地方での代表的な画家である。彼の弟ホセ・リモナ(1864-1936)という彫刻家もいる。この彫刻家はガウディの協力者でもあった。バルセロナの随所で見られる代表的な作品は、国立カタルニア美術館に展示されている「裸体の女性」、コロンブスの塔の「コロンブスの銅像」、「ロベルト博士の彫刻」、ガウディのデザインしたモンセーラのキリストの第一玄義の「キリストの復活」など。そして1895年にコミージャス町の墓地にある「滅びの天使」を製作している。

ジョワン・リモナの作品で興味があるのは、1902年に製作したサン・フェリーペ・ネリ教会の壁画。壁画のサン・フェリーペの顔は、ガウディをモデルにして描いている。他にサン・ジュックという美術サークルを1892年に弟ホセ・リモナとガウディの友人であったトラス・バジェスとで設立させて現在に至る。
カタルニアの世紀末芸術運動モデルニズムの中で活躍した芸術家達でもある。
その彼等がこのコミージャスに作品を並べているのである。
しかもこの大学にもジョワン・リモナの壁画の作品が見られる。

   
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