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実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

シュロの葉と共に描かれる小鳥

北西のコーナー玄関には4本足のポーチがある。
平面で見ると北側を頭にして左上部隅45度に向いた玄関である。
そこは6段の踏面からなる三カ所の階段が十字上に配置されている。
4本の柱は化石入りベージュ系の大理石で、一瞬グレーにも見える。時間とともに空気と雨にさらされ退色し、コケやカビも生えているので、磨き上げれば薄い赤茶のアリカンテロッホかもしれない。
直径825mmの円形の柱礎には、直径45mmの玉が48個リング状に並べられている。この大理石の柱は下部直径600mmと上部柱頭下部直径500mmの、長さ2150mmの円錐台支柱となり、その上には高さ650mmの柱頭が納まっている。
合計2860mmの背丈となるロマネスク様式の柱である。
その上に組石造のカルパネール・アーチが載せられ、内側にテンション鋼材が十字状にかけられている。これによってレンガ造の塔を支えている。

この柱頭にはシュロの葉に小鳥が描かれている。
ガウディにとってシュロの木は地中海植物のシンボルであり、小鳥は聖書による平和のシンボルとして利用されている鳩を描いているのだろうか。

ガウディの作品ではシュロと鳩はよく見られる。
エル・カプリチョの作品以前の計画であるカサ・ビセンスでも、シュロは鋳鉄の柵に利用され、鳩(Columbidae)は内部の暖炉の上部で吊られている。
どこにでも見られるような鳥である。
ではなぜシュロの葉に鳩の組み合わせなのだろうか。
たしかバルセロナではシュロの葉に鶯ともカナリヤ(Seriunus)とも思えるような鳥がよく群がる。カナリアといえばサヨナキドリ(Luscinia megarhynchos)、別名ナイチンゲールとして親しまれている。この鳥なら鳴き声も美しいしヨーロッパのカナリアと言われているので、エル・カプリチョのステンドラグラスに見られるような鳥なのかもしれない。

鳥の種類によっても食べる植物の実が違うことから、鳩にシュロの葉の組み合わせはどうだろうかというような気もする。さらにカンタブリア地方においてはそのあたりどうなのか調べる必要がある。ガウディのように装飾的な部分ではかなりローカリティーを演出することがよくあるために、その方面から検討するとかなり正当な答えを導きだしてくれるはずである。
オウム系であれば、頭は鳩よりも大きいことからこの柱頭のレリーフに類似するのだが、鳩だと頭が小さすぎるのである。
フィンチ(Passerifirmes)だとキューバの方では代表的な小鳥となっている。

そういえばスペインでは、鳥かごに小鳥を入れて散歩している人たちをよく見かけるが、それらはサヨナキドリやこのフィンチ類のような大きさの鳥にもみえる。広場では小鳥を趣味にする人たちが、それぞれ鳥かごを持参して散歩している姿も見かける。
電車やバスの中に鳥かごを持ち込んでくる人たちは、布袋で覆って入ってくる。
人によっては数個持ち運んでいる人たちもいる。彼らは広場に小鳥たちを持ち運んでその鳴き声というか、小鳥のコーラスでも聞くかのようにあつまり、チェスに興じる人たちもいる。このような光景は日本では見られない。

   
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