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実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

地理的・歴史的背景を表現に取り入れる

バルセロナ市のパセオ・デ・グラシア通りは山手ではグラシア地区と交わる。
この地区のレセップス広場とプリンシペ・デ・アストリアラス通りの間に、ラス・カロリーナ通り24番地、エル・カプリチョと時期をともにするカサ・ビセンスというのがある。ここの敷地境界線はパルメラの葉を象った鋳鉄の柵である。壁はモロッコ・カーネンションが描かれたタイル模様の防水加工仕上げとなっている。これらは地中海のシンボルとなる植物達である。

エル・カプリチョの柱頭が中世建築様式をベースにしているとすれば、なぜそんな要素がエル・カプリチョに必要だったのか。それが社会的要素の演出としているのならどんな意味付けがあるというのだろうか。
北スペインというのはフランス、イタリアにもつながっている中世時代の代表的な巡礼ルートになっていることは世界的に知れている。それはサンティア・デ・コンポステーラという街への道(カミーノ・デ・サンティアゴ)という巡礼の聖地となっている。
実はその巡礼の道の途中にこのコミージャス町があり、その歴史的経緯からこのエル・カプリチョの特徴として演出させていると考えられる。更に中世建築の特徴の一つである、柱頭に「パルメラと鳩」の組み合わせを加えることで社会へのメッセージとしているのだろう。
とすれば「地中海と平和」を祈って巡礼者達を励ますとか、ガウディならそんな意味も含めて建築に表現するくらいのことはお易い御用であったに違いない。

彼は自ら“自分は文章作家ではなく建築作家である”と協力者達に話していることからも、「地域性の反映」とか「平和」というメッセージが入口にあってもおかしくはない。

基礎と壁の境の蛇腹は、大福餅の縁のような路盤風に処理されており、そこから本体のレンガ積みが始まっている。これが建物全体をぐるりと巡らされているが、現在では所々破損している。
その路盤の上に150ミリメートル角のひまわりの花と葉のレリーフが飾られたタイルが帯状にしかも市松模様で配列されている。それらの上にレンガ仕上げの壁が立ち上がっている。
この構成も地上に植物達が先住していた所に、人が住む家を建てているということを建築の装飾部分で演出しているのだろうか。
よりによってスペインでよく見られる植物模様がセラミックによって1階の床のラインに幅木のように外壁仕上げの一部となっているのである。それらはスペインの中でも雨の多い地区であることから、壁と床の接点となる部分の防水加工として利用していることにもなる。

北側面ファサードのトリビューンの両脇には、鍛造のベンチとつる棚が添えられている。ところがベンチの位置が内側に向いているのは普通ではない。通常ベランダに設けるベンチや椅子は外向けにするはずである。ところがここでは内側に向けているというのは他に意味があってのことだろうか。
例えば座わるだけではなく植木も置ける棚ということも考えられる。
手すりのデザインも単に手すりというより機能に合わせた意図によるベンチとしてではないだろうか。
跳ね出しの手摺付きベンチならグエル公園でも取り入れている。

しかもそれらは道路の両側にありベンチはそれぞれ内側に向いている。

   
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