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実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

ガウディの研究から学んで、町おこしへ

ガウディはベルゴスの会話の中で「芸術家は、作者としての小さな栄光による虚栄を捨てるべきである。作品を作ったところで自慢せず、精神的満足と本当の栄光とするようにしなければならない。」と栄光について述べている。
「本当の栄光」とはなんだろうか。
私なら「悦び」とすれば解りやすいとおもう。
ガウディの素行で、傲慢に対しては恐ろしいほどの攻撃的態度になる、とバセゴダ教授によるガウディの講演会で聞いたことを覚えている。
この講座はカタルニア工科大学バルセロナ建築学部の中でのガウディ講座が設けられていた20年以上前のことである。人間ガウディの姿を一瞬垣間みたような気分になった。

以来、ガウディの文献というか原書を訳すこともするようになって20年近くなる。ラフォルスによる「ガウディ」(1929)、ベルゴスの「ガウディとの会話」(1971)、セサール・マルティネールの「ガウディとの会話」(1969年)、ホワン・バセゴダの「巨匠ガウディ」(1989年)、ガウディによる日記(1873-1879)、ホワン・バセゴダによる「ホセバイヨとのイタンビュー」(2003年)、そして現在セサール・マルティネールによる「ガウディの生涯、理論、作品」(1967年)等の原書を自分の趣味で訳している。
実に面白くて止められない。これらの内容の一部を間接的な話として聞いていたことを、自分で本格的に訳してみることで理解が深まる。間接的で曖昧な話とは違って、今まで知られていなかったエピソードや人物達などの登場や珍しい建築詳細の説明があったりと発見も多い。

一方で、「私の本来の役目であると思い込んでいる実測」からも学ぶことができる。ガウディ建築を作図することで、さらなる理解ができる。
しかもこの体験による恩恵はそれだけではない。それまでになかった物事への対応や応用力というかイマジネーションも合わせてプロジェクトの展開の仕方まで自然に身につけてきたのではないかと思えるようになった。

その実例は最近実施している私の講演会だけではなく、ワークショップによる作業である。
ニュースとしては私の実家、稚内にある稚内中学校で学生達を対象にワークショップを行っている。
私が考える稚内の街再生計画の一環として提案してきたことで、講演会からはじまりワークショップで学生達と作業を共にしている。これは、モニュメント性の強い作品作りとなっている。
私の学生時代や建築事務所時代の経験による作業とはまったく違う。以前の私には想像すらしたこともなかったことである。
これは自分の実測、作図という過程を応用し、それを実践するワークショップとして展開させている。内容は参加者達の特性を生かしながら共同で作業を進め、一つのテーマで作品を作り上げるということである。

このワークショップを通じて、これが街おこしの核を作るための予行演習になると信じはじめた。
今このご時世に大切なのは、若者達とのコミュニケーションを維持しながら、その中でどのように将来の夢を築き上げるのか、ということが街おこしの基本ではないのかと思い始めたからである。

   
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