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  建築家トップ > バルセロナ便り > 第126回
実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

自然界の形を意匠としてだけでなく、
力学的裏付けを持つ建築構造へ取り込む

ガウディの放物曲線に対する概念として「修正面(Superficie reglada)の利用は、彫塑的に論理的で建設には容易である。放物曲線は父であり、全てに適応し、全てを受け入れる修道院長の説教の様でもある。
独立した支持は、土台と柱頭をもって螺旋状で双曲面の魂(耐力)であり、その上のボールトは内部に双曲面を露出し光には適した形態となる。
放物曲線は全てを収束する。
螺旋の一部は放物曲線であり双曲線の一部も同様である。
全てのフリーズは曲線の連続であり放物リズムである
」。
と、ベルゴスとの会話の中にしめされている。

この中にあるガウディの代名詞ともなっている放物曲線の利用は暖炉の形にも
現れる。
たとえばカサ・バトリョのサロン前室のアルコーブ式暖炉はその開口部は放物曲線を描いている。他に1902年にガウディはさらにパセオ・デ・グラシア通り18番地でバル・トリーノを計画し、その入口デザインでも同じような形でデザインしている。
他にもフィンカグエル、テレサ学院、グエル邸、カサミラ、グエル公園、サグラダ・ファミリア教会等でも見られる。

幾何学としての放物曲線から実践幾何学としてのカテナリー曲線への展開は、グエル地下聖堂での模型実験による建築構造実験力学から採用されているといえる。より自然な力の流れをベースにした建築の理想的な形の探求から生まれた独創的な曲線が、自然界の中に納まっていることを実験で裏付けし、具体的な建築に利用することで新たな建築の世界を切り開いたフロンティア精神の見本のようでもある。

それまでの経緯を探し求めるのは難しいが、自然とのかかわり合いに親しみを持ち、楽しみながらその実践幾何学を建築の詳細に取り入れていた姿が想い浮かべられる。
中でもエル・カプリチョの自然をモチーフにした詳細は、柱頭をはじめとしてメンスラ、格子天井、ステンド・グラスにみられる。これらを単なる装飾として見過ごすかどうかは見方にもよる。
すくなともガウディが自然界モチーフを建築に取り入れるときには必ずある種の意味を持たせていることが、全体の作品を通して読み取れるのは事実である。
その要因をベースに装飾的な分析をすると、まさに人間ガウディを分析するキーワードになると信じている。つまりデザインで作家の人間性が表れない作品はないからである。
ガウディの日誌の文章にも、装飾についての書き記しは半端ではない。

建築がより作品として、しかもオーナーのアイデンティティーを反映させるにはこの手法が不可欠であることは、ガウディ以外の歴史上の作品を通しても証明されていることでもある。
歴史や伝統はいつの世でも絶えることがなく生き続け、その継承も何らかの形でしなくてはならないのが人間としての普遍的な掟なのだろう。

ガウディの歴史をふまえた自然との対話と建築への演出は、非常に関心のあるテーマである。

そしてこの章の本題であるエル・カプリチョでは、その伝統と自然がどんな形で建築に取り入れられているのかを観察することもできるのである。

   
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