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実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

新素材よりも、工法の技術改良と工夫

ガウディ建築で特に注目しなくてはならないのは時代背景に平行した素材の利用と展開である。つまり伝統的な素材の技術展開が見られ、新たな素材の導入にはかなりナーバスになっていたガウディの一面が見られるからである。
それよりも彼独自に作り上げた新たな技術を職人達ともに考案し、実施していたことから「伝統の中の発展」を彼の作品の中で熟成していた。

ガウディの建築技術は、セサール・マルティネールによるガウディとの会話の中で「本格的な科学の説明は、授業では誤解しやすい問題を幾何学で明らかにする。 複雑な問題は幾何学にあるが、ガウディに言わせれば遊びのように優しいもので魅力的なものとなる」とコメントしている。
当時の施工業者達をも感動させるような「技術と工夫」。しかも、自ら現場で職人達に技術指導しながら監理していた、彼の采配が素晴らしいものであったことを疑う者はいなかった証にもなる。まさに優れた建築家ガウディである。

彼の残した数少ない一連の作品で、特に煉瓦技術を象徴するようなテレサ女学院を見る。
この作品で使用されている素材は、スペインでは最も安価な煉瓦である。
つまり、決して贅沢な建築作品というほどではないが、慎ましい建築家としての匠が随所に見られる。勿論、スペインにおいて煉瓦は主要な建材である。
単価も気にかけるほどではないが、職人の人工に関しては、ガウディが気にしていたところでもある。
伝統的な煉瓦技術が次第に少なくなってきているのは、最近では世界的な傾向である。それだけ若者達がその世界に関心を示さなくなっているという悲しい傾向である。大半はバーチャルの世界で楽に、楽しく、稼げるというイメージが定着して、温室育ちの若者が増えてきているようにも思える。どの街でも若者姿が中性化し、服装やヘヤースタイルも全くセックスを感じさせない不思議な世界を演出している。自然界の面白さを体験することなく、あたかもその世界で経験したかのような錯覚に落ち込み、挙げ句に「とじこもり」という社会問題が世界的な若者の問題となっているのも事実である。

職人の世界は特殊であるというより世襲性であるというところが多いようだ。ガウディの時代にはエウダルド・プンティ工房があった。ガウディは学生時代に通いつめた職人達の工房であった。そこは彼にとって居心地の良い場所であったに違いない。彼の父も鋳掛け業という職人工房の中で育っていたという経験がその工房の環境を自然に受け入れていたということにもなる。

現在では職人工房というのは社会的状況、経済状況、需要性も含めて採算が合わないというのが現実のようで、スペインでも同じ現象が起きている。それでも現在ではバルセロナにカタルニア州政府とヨーロッパ共同体の助成による、伝統技術を学ぶ事ができる「ガウディ建設学校」というのがある。授業料は無料のシステムになっている。特に煉瓦による伝統工法、壁画、漆喰壁、左官工事など、石灰モルタルの練り方からはじまり、煉瓦の積み方、葺き方、モザイクタイルの施工等も含めて教えてくれる。
     
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