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実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

ガウディからのメッセージを読みとる

ガウディは作品をつくるにあったって「ものつくるには、創作の法則(これにかわるものはなく成り立ちもしない)に従うことであり、そのためには創作の経験が不可欠である」といっている。 

ガウディによるテレサ学院計画は未完である。本来であれば礼拝堂も計画していたが、現在テレサ学院中央入口左側に見られるネオゴシック風の礼拝堂はガウディの作品ではない。古文書によると礼拝堂は中央廊下に対して直角になるように計画していた。創始者オッソが1896年に亡くなってまもなく、尼僧会長は、ゴシック・アーチのついた煉瓦造建築を大学教授・建築家ガブリエル・ボレール・カルドーナ(1862-1944)に計画させている。

新たな建築なのに様式がレトロになるというのはいささか問題である。オッソでさえも最初の建築計画でビザンチン様式に納得できず、ガウディに計画させてよりオリジナリティ?の高い学校建築にさせているにもかかわらず。オッソが亡くなった後、礼拝堂の増築で、再びレトロな様式を受け入れてしまうということは、最初のオーナーの意思とは違ってしまう。それならむしろ全く新たな建築にした方が、双方のコントラストによる調和がうまれる。
しかもガウディの伝統の捉え方とレトロの採用は、もっと別のところにある。ガウディにとっての建築美学というのは、新たな教育施設計画という概念からすれば、「夢と知恵」を振り絞って伝統から産み出さるべきである。そのために新たな建築の形を提案することで、さらなるコントラストによる調和を産み出す方が適正であったのかもしれない。

私の実測調査中、古文書による写真の照合で鋸朶の上に帽子が載せられていたのを確認した。この帽子は神父帽子(ビレタ)といって知恵と教育のシンボルにもなっている。この78個の帽子を作図に描き込むために、その分析をすることにした。黒い帽子にベイジュの房が付き、頂点には玉が飾られている。
この帽子を幾何学的に分析すると、放物曲線を利用していることがわかった。
さらにトリビューンの中央入口2階ファサード上部に見られる、セラミック製のカルメロ会の紋章でも双曲線を利用した剣のような絵が中央に飾られ、その上部左にはいばらの冠を飾っているハートと右側には剣の刺さったハートが飾られている。いばらはキリストの受難を象徴し、剣はテレサの霊的身体の傷みを象徴している。
その紋章の下には「神のみ」という言葉が記されていたが、これもスペイン内戦で消されてしまい、そのままの修復となってしまった。

これらのシンボルから、建物頂点から、@立体十字はキリストの象徴、ATのシンボルはキリストの十字架又はテレサのイニシャル、B鋸朶は会のお城、CJHSは救世主の子つまりキリスト、D銘文「神のみ」は、天国は神のみを示唆している、E鉄格子のJTHSとはキリストのテレサを象徴し、F玄関の敷居の銘文「皆が通る」ということになっている。

つまり地上の世の中には秩序がある。その秩序の道徳や知識を学ぶ為の学校で「皆が通れる」場所となる。上部の銘文「神だけが通る」という演出は、外の高いところ。すなわち天国を示唆しながら「神のみが通る」と読み取れる。
まさにシンボリズムによるトリビューンの演出がガウディによってデザインされているのである。
僅かな言葉とシンボル、そして位置の設定によってガウディのメッセージを読み取ると言うのはこのような作業のことである。

     
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