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実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

ガウディの原理と現実

普通であれば公園入り口にある看板からどんな公園かを想定する。それであればやはりイギリス式田園都市計画に従っているというのも理にかなっている。ところがここはスペインであり異文化が交錯している国でもある。看板から中身まで統一させるコンセプトというのはあまりにも通俗的である。時には意外性を秘めているというのもガウディの思考過程にはインプットされていたような気がする。彼自らも「我々の力と美しい形の卓越性は感性と理論の均衡にある。北の人種は感性に固執して窒息する。南の人種は色の過剰に目が眩み理屈を無視して化け物を作る」と説明している。
とすればグエル公園の様式には、多柱室のギリシャ建築様式もあれば洞窟的様式もある。他に中央入口のパビリオンのファサードは幾何学の発展としてみるとイスラム建築にも見られる三つ葉状アーチもある。むしろ当時のアーチが幾何学で作られている事から、その伝統的ア?チのニューバージョンということになる。しかもアーチではなく建物の破風に利用されている。
ここに表されているニューバージョンとは、施工上の解決策としてプレファブ工法を建築に取り入れていること。つまりグエル公園では建築様式はそれだけでは済まない施工技術が採用されている。中央入口の階段奥にある多柱室(サラ・イポティラ)はエジプト建築でも見られるギリシャ建築様式として構成させている。
しかもドリス式で縦溝の入った列柱が建ち並び、外側の柱だけはパルテノン神殿と同じ様に内側に傾けている。さらにガウディ得意の特殊な機能が取り入れられる。
この多柱室は上部にあるギリシャ劇場となっている広場を支える単なる列柱としてだけではなく、広場で受ける雨水を濾過する役目も担っている。多柱室下には1200立方メートルの貯水タンクが納まっており、そこに水が溜まるようになっている。貯水タンクに入れるピット・プレートが多柱室にありそれを開けるとタンクのフローターに入れる階段がある。
私がそのタンクの底を覗いた時には水溜り程度でしかなかった。
にも関わらず中央階段の中央上部にあるドラゴン、「ピトーン」という地下水の守り神によって水が吐き出されているのである。その頃、公園の修復をしていた関係者に「あの水はどうしたのですか」と尋ねると「水道の水です」と答えが返って来た。
そこで「原理と現実」の違いを感じさせられた。その水は続いてそのドラゴンの手前にある「青銅の蛇」として例えられている吐水口から水が吐かれている。
この蛇の丸い背もたれの中央にはカタルニアの紋章が描かれている。その後ろには円弧状のベンチがついている。
「カタルニアの紋章」に「青銅の蛇」はどんな関係があるのだろうか。これを解き明かせた人は、その解答はだれにも教えないでください。
それがガウディのメッセージです。
このようにして永遠にミステリーがガウディ建築の中に秘められ楽しむ事ができるのです。

実際にグエル公園の手法は、作品を作るための知恵がそうさせているのか、それとも本能なのか。いずれにしても好奇心をかきたててくれる。
     
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