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実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

職人と、連日のワークショップ?

ガウディはベルゴスとの会話で次のように述べている。
指揮するものは、議論してはならない。その議論によって権力が減少する。議論は光ではなく独自の愛だけである
この言葉もホワン・マタマラのコメントと共通するところである。つまりガウディ自らが、議論する事の少ない人であったことも裏付けされる。しかしそんな彼でも、傲慢な人に出会うと凄い勢いでやり返すという。
いずれにしても正義感の溢れた人で、人情味もある素敵な人だったのだろうと私は想像している。当時、経済的に余裕もなかった工事現場に、どのようにして200人以上の職人達を集めたのか。皆がガウディを慕っていたのだろうと考えさせられる。彼のカリスマ性とその人間らしい魅力が露出し、さらに建築作品の演出効果にまで表されているのではないだろうか。

そんなガウディは、グエル公園の工事を進める上で毎日職人達には翌日の課題を与えていたという。つまりは毎日のように、職人相手にワークショップのようなことをしていたことが想定できる。確かに課題を出されると楽しくなることは、私も学生時代感じていた。特に物をつくる課題は夜昼問わず没頭してしまう。ガウディの場合、破砕タイルで仕上げをする時に、職人達には毎日のように自宅周辺で見つかった廃材を工事現場に運ばせていたと言う。まるで雑品屋さんのような作業で、面白い破砕の作業をさせていた。その頃、大学を卒業してもまもない建築家ジュジョールには彩色を任せていたという。例えば多柱室の天井を見上げると柱の抜けたところにメダルがついている。またボールトの部分にもカラフルな破砕タイル仕上げになっている。
それらをよく見ると、驚いた事にジュジョールのサインが描かれているのに気がつく。グエル公園全体の計画は、ガウディでも装飾的で細かな部分は、それぞれの担当者達が請け負っていた証にもなる。何といっても面白いのはこの多柱室の柱、その柱の芯には縦樋が納まっていて、広場で濾過した雨水を地下に流し込む役目を果たしている。
歴史的意味合いを持たせたこの多柱室の他に、公園の高架や植栽管理にまで考慮されているのは巨匠としての巧を際立てさせていることになる。
人々の生活の場がどれだけ使いやすいかというのは、予想はつくが実際には、人々が使ってみてはじめてその結果が得られる。そこには地域性もあるだろうが、人々の生活習慣、動線と空間の利用性、光や色彩に至るまでも影響する。
ガウディはバルセロナで一生過ごすが、まさに彼の身に染みている地域の生活習慣には、文化や芸術も含まれているのは当然である。さらにカタルニア文化と併せて地中海文化の感性も同じように反映されているのは自らも唱っているほどで疑う余地はない。その中で繰り広げられるグエル公園でのアートは、建築的また設備的な機能をベースに、芸術性の高い配慮が随所に見られる。もし当初の計画であったガウディによる分譲住宅計画を進めていたとすれば、どんな田園都市ができあがっていたのだろうか想像するだけでも好奇心を駆り立てる。
分譲住宅といっても全て同じ形式の住宅ではなかったはずだ。施工法は同じでも形、色、面積等は全て異なったに違いない。それら全て完成していたなら、これもまたバルセロナにとっては大変な宝になるという事も想像ができるが、それはお伽噺となってしまった。

ガウディによる自然観察と建築の逆さ吊り構造実験は、いまだに現在の建築をも超越している部分もあるように思える。

     
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