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  建築家トップ > バルセロナ便り > 第168回
実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

柱を抜いた意図とは?

ガウディは知識について
「知恵は科学を超越する。その名前は<<Sapere>>好む、味わうと言う意味に由来して結果を表す。知恵はまとめであり科学は分析である。 分析のまとめは、まだ一部の分析であって知恵にはなっていないので完璧ではない。知恵は豊かさである」
としている。

グエル公園ではその科学と伝統技術、そして知恵を駆使して日常生活の環境改善を図るような細工を施しているのではないのだろうか、と思えるようになった。
例えば中央入口の正面奥に見える多柱室では、柱を抜いている場所がある。柱が一本抜かれた場所が2カ所と2本抜かれた場所が一カ所となっている。
柱の抜かれた面積は、柱一本抜かれた所は64uとなり、2カ所抜かれているので128u、さらに2本抜かれた所は128uとなる。つまり合計254uが解放されている。
その内部空間はどんな意味があったのだろうか。
当初公園ではなく田園都市分譲住宅地として計画されていたことから、住民の為のコミュニティー・スペースの一環として朝市等ができるような所とされていた。しかもスラブはお椀のようなキューポラが並んでいる。まるでたこ焼きの鉄板がひっくり返ったようにも見える。
通常カタルニア地方では、「ボベディージャ」という煉瓦造の小スラブ連続アーチで仕上げられる。この公園では正方形のグリット状スラブを処理する為に煉瓦造のお椀のようなキューポラをプレファブ化することで、構造の合理化を計っている事が理解できる。柱頭の部分は梁が結合されるところとなり、その部分は溝となる。そこにドレンを取り付けて柱に縦樋を内蔵させている。
これによって広場の雨水をグランドで濾過し、その縦樋を通して列柱の下に納められている1200m3の貯水タンクに溜まるような仕組みとなっている。
私がこの公園の実測中に市役所工事が行われていたので、貯水タンクの内部を見学させたもらったことがある。思っていたほどの水は溜まってはいなかったが、貯水槽としての水抜きもついていた。ところが貯水槽に水が溜まっていないのに中央階段の噴水に水が流れ落ちているのが気になり、工事責任者にその事情を尋ねてみると、既に水道水で水が出るように仕込まれているというのである。
本来であればフローター役としての噴水が水道水を利用しているとなると、単なる無駄な噴水と言うことにもなるので、その水道水がいつ頃につけられたのか確認する必要がある。
また、この多柱室になぜお椀のようなボールトが必要だったのだろうか。
普通に考えるとフラットなスラブでも良いはずと思うのだが。

そこで公園全体の構築物や建物がプレファブ工法になっていることを想い出す。すると梁を支える為の破砕タイル仕上げのメダルも気になりはじめる。
プレファブであるいじょう、梁もスラブもユニット式となる。とすれば柱の抜けている所はどのように梁キューポラを支えるのだろうかと考えさせられる。
柱の抜けている所はカラフルなメダルが梁を受けている。
しかし梁背は変わっていない事から、メダルが受ける荷重は他の柱と同じであることも理解できる。

そのメダルの彩色はガウディの協力者で建築家であったジュジョールの監修によることが、彼の得意なサインもそのメダルに刻印されていることからも解りやすい。
     
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