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建築家トップ > バルセロナ便り > 第219回

実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

3番目のドラゴン、ベージェスグアルド

ベージェスグアルドの作品を見学してみた。
屋上階に見える鋸朶と立体十字架がついている塔、窓の鉄格子、入口の明り採り窓、孔の開いた柱頭、屋根裏階の煉瓦仕上げの透かし構造体、そして屋上から屋根の小屋組の上に上がるとさらに鋸朶がついた見晴し台になっている。
鋸朶は中世時代の城塞のトレードマークのようなもの。ここから弓や鉄砲、大砲などを敵に向かって放っていた時代があったのだ。しかし、ガウディがベージェスグアルドを計画したのはそんな時代ではない。
そこでガウディはどんな意味を持たせて、これらの鋸朶をデザインしたのだろうかと気になる。

カタルニアの王様マルティン・エル・ウマーノがこの場を購入して別荘をつくったのが始まり。その後、アラゴンの5代王でカタルニアのアルフォンソ4世の妻マリア・デ・カスティージャ摂政女王(1401−1458)が1438年9月にベージェスグアルドに住んでいた記録がある。マルティン1世の未亡人マリガリータ・デ・プラダはベージェスグアルドを1422年に個人に譲渡した、とされているのだ。

その後の記録では、1888年5月24日にフラケルはアストルガの司教ホワン・バウディスタ・グラウ・バジェスピーノ(Juan Bautista Grau Vallespinos)にベージェスグアルドを売った。
グラウ司教の死後、遺言書執行証人のアストルガの司教座参事フランシスコ・ハビエル・マルセル・ゲベリ(Francisco Javier Marcel Gebelli)とアントニオ・ビジャタ・アメネス(Antonio Villata Amenos)は1900年6月12日ハイメ・フィゲーラス(Jaime Figueras)の未亡人マリア・サゲス・モリンス(Maria Sagues Molins)女史に売却した。
グラウ司教の不動産はカタルニアで売買され、そのお金は労働者や貧しい学生達の為の学校をレウスに作るようにと遺書を残した。
マリア・サゲス(Maria Sagués)の信頼するガウディが、中世時代の廃墟であったことを理解して計画されたとしている。

確かに建築の詳細を見ると中世時代の頑丈な建築にも見えるが、ゴシック的な要素の窓などもついている。さらにこの作品が計画されたのが1900年であることからグエル公園の計画と同時である。これらのガウディの作品との共通点に加え、材料の取り扱いでもプレファブ工法をこの作品でも利用している。
利用されている素材は天然スレートで、さらに細かく割ってプレファブ仕上げとしている手間ひまのかかる施工をしていることも見られる。
意匠的に興味をひくのは、この屋根裏階と窓の位置ではないだろうか、
遠くから見ると屋上階の鋸朶とさらに小屋組の屋根の2重の鋸朶がついている。

案内してくれた歴史家のガイドさんは、これをドラゴンに例えて話しをしてくれた。

であればガウディはグエル公園、カサ・バトリョ、ベージェスグアルの三カ所でドラゴンをモチーフとした抽象化を建築に演出したことになる。
     
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