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建築家トップ > バルセロナ便り > 第313回

実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

建築表現に別な何かを忍ばせる?

ガウディによる建築における化け物の演出とはどんなものなのか。私はAR作家であればそれで表現したいほど面白い世界になると思っている。

普段建物を何気なく見る時は単なる建築として見ている。だがその要素を多分に含んだ着色と非線形による表現が何を参考にして有機的なものに見せているのだろうか。ガウディのことだから参考例はあるはずと信じている。そのある部分として捉えると、ほぼ創作した本人以外は、本来の姿が想像できないほどに抽象化されているとしたらどうだろうか。
でもそれを創作した作家はそれが何であるのかということを知りながら、あたかも別ものに見えるように抽象化されている可能性は十二分にある。
そんな発想があってもおかしくなはない。

例えばダリ美術館に「モンローの顔」というのがある。そばで見ると赤いソファーと暖炉が背後にある。それをある位置から覗くと何とモンローの顔に見えている。つまり錯視的な技法によるアート表現となっている。ガウディはそのようなコンセプトを都市におけるランドマークになるような建築表現として考えていたとするならどうだろう。
ある位置から見るとドラゴンであり、外から見える姿は愛らしいカラフルでファンタジックな建築に見えると言った具合である。
ところが詳細を覗くとそれが大腿骨であったり、植物レリーフでカモフラージュしていたりする。でもその背後には縦枠のない大きなギロチン窓になっている。この窓がどうして窓の縦枠が消えるようなギロチン窓の細工をする必要性があったのだろうか。建築の場合はそのような詳細の細工は手間がかかるわけだからオーナーにそれなりの説明が必要である。
ここで、ガウディはサグラダ・ファミリア教会について「皆、自分達のものが教会で見られる。農民は牡、雌の鶏を見分け、科学者達は星座、神学者はイエスズの系図、しかし説明や理由はその構成によって理解し宣伝してはならない。」という言葉をベルゴスとの会話に残していることに気がつく。

誕生の門で天使ガブリエルがマリアに受胎告知をしている場面が見られる。その頭上にゴシック・アーチがあってそこには訳のわからないレリーフが見られる。実は、それが「ガウディが示唆している星座」、つまり12黄道のうち6つが表現されているのである。左から乙女座から始まり獅子座、蟹座、双子座、牡牛座、そして牡羊座と並んでいる。その存在を理解し、その存在理由も理解できる人は秘密にして欲しいということなのである。なぜそのような表現をガウディが説明したのだろうか。それは作家の作品に込められたソースであるということであり、他人にその手法が口外されるということを避けようとしての判断である。まるで料理のコツとなる極秘が暴露されてしまうことへの懸念に酷似している。
私もそれ以上のことには深入りせずにガウディの建築の本来の面白い世界へのアプローチとして留めておくことにする。あとは見る側の感性に任せる方が楽しさを満喫できると思える。これがガウディアートの世界である。

このようにしてカサ・バトリョの作品を詮索し始めるとさらに面白くなる。なぜか、実はこの作品の計画が始まった時期が誕生の門の大天使ガブリエルによる受胎告知の作品をてがけていた時期と重なるからである。
そうなると作品同士の関連性もあるのかもしれない。無いとは否定できない。
その謎を解くのは誰か。この章を読まれている皆さんの想像力に任せましょう。

     
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