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建築家トップ > バルセロナ便り > 第324回

実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る


伝達手段として形を残す

カタルニア工科大学バルセロナ建築部の博士コースには、建築演習の科目がある。
これは建築デザインをするときに、何をどのように演出するのかという手法を教えてくれる科目である。
私は博士コースでこの科目を受講していた。その終了課題が自由であったので、カサ・バトリョについての博士論文の一部をこの科目で提出して合格させてくれた。
ここで既にガウディ・コードの一部を紹介したのであるが、その時は明確にコードということばを使用せず、あくまでも歴史的な経緯と神話の組み合わせで建築の演出をしていることで終始させた。
建築は生活の中心にある器であり空間である。その中で毎日の歴史を刻み込み、時代とともにその空間に染み込むものである。そして時代に合わせた様式と文化も反映される。その瞬間に生活空間に変化を生み出す。
そうすると無意識のうちにその生活空間が時系列で変化していることが理解できるようになる。それを事細かにメモすると、生活空間の歴史が読み取れるようになる。そんな映像があると面白い。他人が見ると人の生活に面白さを感じ取れるようになる。
それを生活日記としてビジュアルに残すことで、立派な個人の歴史的ドキュメンタリーとしての記録となる。現在では単なる日誌ではなくビジュアルな日誌としてみることができる。 
最近ではInstagram、Tiktok,youtube、Facebook、ホーム・ページ、ブログなどでそれぞれがネットで相互にリンクしながら小さな歴史を刻み込んでいる。
私は毎日Facebookを更新している。写真とコメントも時には入れての作業である。するとそれにアクセスしてくる人たちの様子がわかる。そこでどのような傾向の写真を求めているかということも見えてくる。他人の反応が即座に見える手段となる。まさに時代に対応したメモリーとなる。

時代を遡ると現代のようなハイテクによるコミュニケーション手段はなかったが、それに代わる手段と最もプリミティーブなコミュニケーション手段は15000年前のアルタ・ミラの壁画であったりする。次第に文字も発達するようになってエジプトの絵文字であったり、中国の象形文字であったり、マヤ文字、インカのキプのような紐の結び目による伝達手段であったりする。
世界の民族が自分達の能力や手段に合わせて方法を駆使して文化を継承するということである。
そのようにしてみると、動植物たちの伝達手段は何かということになる。人間社会でも多くの伝達手段があるわけで何らかの方法があるということだ。植物にも臭いや形で品種を継承し昆虫たちによって花粉が運ばれたりしての継承手段を取ったりもする。昆虫達は同種の仲間を多く作るような活動をする。
つまり形にはそれなりの意味を演出することで歴史や文化を継承する手段となることに気づくはずである。

そのような視点からガウディの作品を見ると、サグラダ・ファミリア教会では時の動植物達をできるだけリアルに残す手段としてのモデリングをし、建築の詳細に利用することでサイズこそ違っていてもその時の様子を半永久的に残せる手段となる化石化を図ったのではないだろうかと私は見ている。
     
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