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建築家トップ > バルセロナ便り > 第341回

実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る


カナリア諸島をテーマに枯山水

日本の建築空間で、基本的に西洋建築との違いは自然環境の取り入れ方にある。
しかも建物はシンプルで自然環境と対峙させながらの空間演出を心がけている。
ところが西洋の都市空間では、街自体が城を中核とした石造の建築物や環境づくりが中心となっていた。それでも、まちづくりの中でもイギリスの田園都市計画は、特に自然形態をできるだけ生かした造園まで都市の中に取り込むような計画がされるようになってきたのもこの200年前後のことである。日本の場合、生活習慣の中で自然との共存がその昔から生き続けて現在に至っていることから、小動物達との共存も子供の頃から慣れている人たちが多い。
都市の中の庭ということで今年の初めの頃にバルセロナのカサ・アジアから連絡があり、マドリッド王立植物園に日本庭園を作りたいとその庭のデザインを依頼された。今年の6月13日に設置して11月まで公開されるという話であった。 

私は2021年カナリア諸島で起きた火山噴火で、その後地元の人たちは火山灰の処理に困っていたことを思いだした。そこで火山灰を利用した枯山水の提案をしたらということを彼らに連絡した。するとその方向で絵を描いて欲しいという返事があり、主催者側がその提案を受け入れてくれた。
その後、カナリア諸島からその火山灰70トンがマドリッドの植物園に運ばれ、セゴビアから大理石も運ばれた。
テーマはまさにカナリア諸島の紹介という計画で、それを枯山水として表現した。私が作図したカナリア諸島のイメージ図に従ってセゴビアからの大理石を適当な大きさに切って置かれていた。それに沿って火山灰も大地からおよそ20cmほどの厚さに敷き詰められた。それを施工するとなると道具も必要であるが、そのレーキ(熊手)までもデザインさせられた。
6月13日に私は現地にかけつけ、予め用意されていたレーキを利用して火山灰に模様を描き始めた。レーキの素材は合板で作業中に壊れてしまい、修理してなんとか模様を描き終えた。これを作りながらスペイン人はアイデアが面白いと受け入れてくれる気質があることを確認した。
このようにして枯山水「禅の庭」「黒い庭」ということでニュースにも取り上げられた。
真夏の作業で、半袖でレーキを振りかざしていたために私の両腕はすっかり日焼けしてその夜はヒリヒリであった。日よけ止めをするのを忘れていたのだ。
ここでの教訓は、「屋外での作業は日焼けに注意」である。
そして火山灰を利用することで非常に学びがあった。それは火山当時のシミュレーションが、他の場所でもできるということであった。しかもその庭を仕上げた後に水を撒くと湯煙も立ち上がってまさに火山灰がその場にも流れ込んだ様子を表現できると思った。
その庭に大理石をちりばめてカナリア諸島の縮尺地図のように描くことでカナリア諸島のメモリアルな枯山水ができると予想していた。
当日オープニングにはカナリア諸島の政府関係者も来てくれて賞賛してくれた。 私はカナリア諸島でこの火山灰を利用した煉瓦ができないだろうかと思った。そうすればサステナビリティーな火山灰の利用につながりまちづくりにも還元できると思った。

私はこの枯山水を製作しながらグエル公園のことを思い出していた。
ガウディが禿山を利用して公園を計画したのは、この場所にあるものを利用して地中海文化を表現していたということだ。さらに粘板岩の傾斜地に公園を作ったのである。そこにはギリシャ劇場のような舞台装置まで作った。

その時にガウディが地中海文化の演出を考えていたのはまさにこの公園から地中海が一望できるからでもある。私のこのメモリアルな造園計画では火山灰を利用することから始めた。さらに時間があればカナリアの伝説も演出できればと思っていた。
     
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