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建築家トップ > バルセロナ便り > 第345回

実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る


限られたスペースを有効に活用するために

建築における幾何学は、意匠的な解決、力学的解析、物理的な幾何学となる。特に意匠的な幾何学はその組み合わせによって空間の在り方が大きく変わる。
グエル公園では円の構成、しかも2の倍数が基準となっている。直径が4mの円によって構成されているところが多い。
柱の直径は1mのところもあれば80cm、40cmというところもある。
特に直径40cmの柱というのは、グエルが1906年から住んでいたというララルトの家の周囲にある。それは専用高架の中で螺旋状にねじれ上がった星型六角形の柱があり、円形状に2.4mピッチで12本並んでいる。その他にも、同じレベルにある直径1mの土塁側に傾いた柱は4mピッチで30本、多柱室まで並んでいる。
ここでの柱の傾きは、ガウディの協力者で構造解析を担当していたジョワン・ルビオによってベクトル解析図が残されている。それによってドームが築き上げられているが、見事な非線形のボールトとして全体が膜のように構造が一体化されている。ガウディはサグラダ・ファミリア教会で様式の一体化を提唱している。そしてそのアイデアはこの公園でも反映され、しかもそれを構造的な幾何学解析として証明していることになる。仕上げ材は、現地の粘板岩の掘削時に出た石材を利用してのことである。この高架に適応するように成形されての再利用ということになる。まさにサステナビリティーの思考でもある。

多柱室の柱は、ドリス様式の柱で直径1mの柱が4mピッチで86本配列している。ところが中央の4箇所は柱が抜けている。朝市ができるスペースとして抜いたとされているが、ガウディによるレファレンスは見当たらない。ただし当時の計画では、ここで朝市ができるように計画しているということであった。であれば単に16uのグリットスペースから1本の柱を抜くことで、64u、さらに2本の柱を抜くことで96uのスペースを得ることができる。そうすれば人々の買い物ができる広さとしてはゆとりのあるスペースとなる。つまり16uの狭苦しいスペースではゆとりのある買い物スペースではない。そのようにガウディは考えていたことは当然である。
少なくともこの公園を利用しようとする人たちは、ゴシック地区での石造の壁に囲まれた空間から解放され地中海を見渡せる広々とした空間と自然の空気を求めてのことであるから、そのような空間の配慮も当然となる。
ここでガウディの日記を見ると、最初のページには実家の建築的な説明をしている。特に5人家族での住宅面積を当時150uと設定しているのだ。つまり30u/1人の割合で住宅スペースを考慮していたことがわかる。
それからしてもガウディの建築感覚は通常よりも若干広いスペースを考慮していたことも理解できる。
私も狭いスペースは閉所恐怖症に陥りやすいと実感している。
学生時代には3畳間のアパートから始まり4畳半そして8畳間というスペースと社会人になってからの居住スペースを経験した。

生活での活動のことも配慮すれば、それに適応した広さというのも必要である。従って建築計画では、限られたスペースにおいてもできるだけ広い有効スペースを考慮することがテーマとなると言える。
     
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