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建築家トップ > バルセロナ便り > 第349回

実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る


学生時代には思いもしなかったガウディの研究

建築にとって方位は重要である。というのも日照の問題と通気の問題が関わるからである。それが居住施設であれば尚更である。私がガウディ建築を実測していた時には日照による自然光の取り込み方に注目していた。というのは建物の影が地域に影響することさえもあるからである。中でもカサ・バトリョの例がとても参考になる。ガウディの建物の中でこれほど日照と自然光を考慮して作品を際立てている建築は他にはないと見ている。
私にとっての第一印象は「とても装飾の派手な建物」という風に見ていた。だから実測や作図はする気も起きなかったというより、実測するなどありえないとさえ思っていたのだ。
ところが「人生の悪戯」で、バルセロナにやってきてガウディの勉強をしようと決断した。その時から自分の思いとはベクトルが全く180度変わってしまったことに気がついた。その時、自分が置かれていた環境と条件がその方向に向いてしまったという表現がふさわしいと思えるようになった。
思いもかけていなかった人生を歩んできたことになる。
誰でも夢はあるはずである。私は9歳の時から建築家になりたいと思っていた。ところが大学ではどうすれば建築家になれるのか分からなかった。他の仲間たちはどこそこの建築設計事務所でバイトしてということで作業をしていた。ところが私はそんなことをしてどうなるのだろうという程度にしか見ていなかった。むしろ自分の好きな勉強をしていた方がましとさえ思っていた。つまりその頃は学問に対する関心もそれほどなく、単にものを作るという世界にだけは興味があった程度である。今になって初めて「自分の夢は自分で切り開く」ということに気がついた。全てが手探りであって学生時代の勉学は理解していなかったことになぜか疑問を抱くことさえある。どうも私には押し付けの勉学が同調していなかったということなのだ。だから興味もなく、なんとなく学生時代を過ごしていたことに気がつく。
今では、その時代を「カオス」としてみている。もしその頃に自分の波長に合うものを見つけていたら、その道を追いかけて今の自分とは違った自分になっていたことだろう。むしろ社会の動向に鈍感で常にマイ・ペースを維持している自分である。
だからこそ、今の自分を自覚してガウディにターゲットを絞ってきた。
もしかするとガウディの波長が自分に合っているのだろうとさえ思える。
これまでの調査でも同調する場面があったし、作品のコードを紐解いているうちにいつのまにかその波長が同調している自分に気がつくことさえある。
そんな自分がガウディ建築の実測をして作図までしてきた。
あれほど嫌いであったカサ・バトリョの建築作品を実測して作図までしてしまう自分の姿がどうしたことか。自分の姿に不思議さを覚えるようになった。マイ・ペースによる自分の波長に同調することを実測して見つけることができたのである。

もともとアートも作図も嫌いであった学生時代の自分からは想像できないのが現状である。最近ではその様子を見て、これは自分の中にもう一人の自分がいるということに気がつく。しかも日本にいた時には信じられないスペイン語を話しているのだ。英語さえも話せなかった自分がいつの間にかスペイン語で対応できるようになっているではないか。その環境でガウディの面白いコードの研究を深めている。
     
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