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  建築家トップ > バルセロナ便り > 第43回
実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

捻れと断面二次半径と糸杉の実を繋ぐもの

ガウディは柱について“この世に垂直な柱(多くの場合その様に試みるが)は一本もない。自然なものは傾きを求め、どのくらいの傾きが相応しいのか研究するのがよい。”と言っている。
ガウディの場合は傾きの他に捻れを使う。
捻れと言えば紐を数本で捻り編み上げることで更に強度は増す。
柱も捻ることで弾性によって元に戻ろうとする力が働くため、断面積は縮まるが逆に密度が高まることによって強度が高まる。

構造的専門用語を借りると断面二次半径が大きくなるので強度が高まるということになる。
立体十字架の飾りが付いた塔のタマネギ型ドームの形は、実は見事な幾何学構成になっている。
そのドームを支えている円筒には、サグラダ・ファミリア教会と同じ形の螺旋階段がついている。ここでは階段巾がやや狭く、平均54cm。
更に壁の厚さが30cmくらいでその上にタマネギ型ドームが52cmの跳ね出しになっている。これからドームの直径は約280cmということになる。
このドームの平面形態は円の構成で、尖塔まで建ち上げられている。

この立体十字はゴシック建築に原点を見るが、ガウディはさらに糸杉の実をモチーフにして立体十字架を作り出すことを、彼の協力者であったホワン・マタマラのデッサンによって説明されている。それは自然界のモチーフをダイレクトに利用したデザインであることを裏付ける。

例えばテレサ学院の鋸朶にある尖塔、ベージェスグアルドの尖塔、グエル公園のパビリオンの尖塔などはその手法から派生した立体十字であることは既に書き記しているが、その立体十字の表現が作品によって変えられている。

立体十字架は既にゴシック建築に利用されている尖塔でもある。
しかも演出は植物模様で描かれていたりする。
テレサ学院では確かに植物模様というより、花の蕾をそのようにアレンジしていることが理解できる。立体十字のイメージはホワン・マタマラによるスケッチでは糸杉の実からのインスピレーションとしている。その実がまた別の植物の実又は花で構成されている。
実際の糸杉の実は、五角形による多面体の実で構成されているので、基本的には立体十字にはなりにくいのは事実である。さらにその立体十字の先は他の花又は実で4枚の花びらまたは葉で構成されている。類型としてはキク科(クリサンテモ、又はヒマワリのようなエリアントゥス)にも見えるが花びらまたは葉が4枚ということはない。
ということでかなり抽象化されたこの植物が何をベースにしているのかはまだはっきりしていない。
サグラダ・ファミリア教会でのモチーフの利用方法は写実的であり、工事現場に棲息していた動植物達への労りの念をもって石に刻み込んだとも言われている。
もし同じような手法を利用したとすれば、ガウディの前の建築家フランシスコ・パウール・ビジャールが既に工事を始めていたことから、工事前の新地に棲息していた植物は予測が立たない。しかし宗教または地域に関連した植物とすれば糸杉(教会に関連してよく利用されるモチーフ)、レタマ(エニシダ、ガウディ好みの地中海花)、椰子(地中海のシンボル)等とヒントになるような植物の見分け方はある。他にテレサ(跣足カルメロ会修道女)に関する花とも考えられる。

   
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