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実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

松の木を建築の基準点としたようだが、しかし

先日、久しぶりにコロニア・グエル地下聖堂に出かけてみた。
修復後の地下聖堂は、柵に囲まれていることから人を寄せ付ける事ない寂しさを覚え、しかも檻の中に入れられたモニュメントと云った雰囲気になっている。
以前は勿論柵などは無かったのである。しかもポーチの上には教会堂にアクセスするための階段があって、人々はその手摺もない階段を上がり下りして楽しんでいた事を思い出す。
それが今では階段登り口に大きな石が置かれてアクセスができないようにしてあり、しかも階段のあった部分には防水加工だけで黒っぽく仕上げられ、勿論階段は撤去されている。階段入口周囲はアクセスとしての機能がなくなった為に教会としての使いやすさはなくなっている。
今後そのポーチ周辺がどのように処理されるのかは、管理者の配慮によるものである。
修復計画は褒めるに値するものではない。作家のエゴと作品の特徴を無視したものとなってしまっている。

中でミサを聞くと適度な音響効果で聞きやすい。つまり内部空間は、教会内の隅に至るまで音が良く響き渡る。ということは音響効果としては最適な構造体になっているということになる。その効果で、自分の声は勿論、人と話す時にも聞き取りやすい。
その音響を醸し出す手法は、後陣の部分をギリシャ劇場のように円または円弧にすることで、音の反射を効果的にしているということであろう。

さて問題の構造として気になるのがポーチの柱である。
実に不規則な配置でしかも傾いている。
柱の傾きに関しては多重フニクラーの構造体に従っているという事からその傾きは理解できるのだが、柱の配置がどうしても不規則な様に思えてならないのである。

もしその不規則性が幾何学的ではないとしたらどんな事が要因になるのだろうか。
また地下聖堂内部の柱の位置と壁の関係、そしてポーチの柱とどのような関係となるのか気になる。
そこでコロニア・グエル教会建設前の松の木林と何らかの関連性があるのではないかという想定をしてみた。
しかし残念ながらこの現場の工事前の松林の状況写真は見つからない。
周囲の松林の樹木の配列と類似するのだろうかという想定もしてみた。
それが場合によっては建築ベースの裏付けとなるのではないか。

教会堂へのアクセスとして、ポーチ上部の階段昇りかけで階段が左に曲がる点の脇に、ちょうど松の木がある。

さて、建築する場合に最初に基準点を設けるという事は常識である。

その基準点を松の木一本に設定し、そこからの建築の位置関係を割り出すという想定のもとに他の柱の位置を考えたとしたらどうなるだろうか。しかし、現在の松は私が実測していた当時のものではない。これは今回の修復で引き抜かれ、私の指摘で新たに植栽された。ところが木の種類が違うのである。
いずれにしてもある種の規則性を見いだす事が現在の課題になっている。
ではどのように見つけ出し、どのようにすれば逆さ吊り構造実験模型の形状にそった柱の位置が設定できるのだろうかと考える。

   
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