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建築家トップ > バルセロナ便り > 第226回

実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

カサ・バトリョは装飾的か?

ガウディの手記の中で
物が非常に美しくあるためには、その形は余分な物があってはならない。素材の条件は、単に役立つ素材による。目的と素材の管理は、精度を高めるためであり、コントラストによって、周囲に優しい形にする。それでもおかしな場合は、躍動感、雰囲気のを壊さない範囲で、シンプルな装飾を補足する。それで形態を良くし、機械的な部分を削除し、必要性に応じて満足な形態となるように物の”性質”に応じた条件を与えることになる。つまり性質は装飾の結果と言える。
と言う装飾論理を唱っている。
これを参考にカサ・バトリョのファサードを見る。
一見、装飾で全てが覆われていると見る人が大半である。さらに細かく見てみる。両隣の建物にファサードのレベルを揃えている事が読み取れる。
ここで言えるのは「周囲に優しい形」という意味が、同じような仲間達的な意味合いで肩を並べている様子が伺える。続いて壁面の装飾のあり方を見る。全体的にはカラフルな破砕タイルのように見えるが、近づいてみるとガラスの裏に色が塗られて貼られているだけ。しかも所々に8種類の丸い皿がちりばめられている。ここで「役立つ」と言う意味は建築的に役立つ意味を示す。つまり外壁面は防水性と耐久性を求めるところである。しかもここにガウディが言うところの「作品としての物語」を示す。この着色ガラスと皿によって星座を表現していることが伺える。ここでは建築機能と芸術作品作りの趣向で仕上げられている事になる。
ファサードにある小塔は、伝統的なタマネギ型ドームのついた立体十字架までが陶器で作られている。ここで「機械的な部分を削除する」は伝統的な形の繰り返しを避ける事を意味していると読み取ると、オリジナリティーのある尖塔と屋根の鱗状の瓦、棟瓦などは伝統的な繰り返しの類いではなくむしろ有機的な物語または神話上の意味も含めた形ということで表現していると見えてくる。

神話については地域性のある作品とするために、カタルニアの代表的な神話サンジョルディのドラゴン退治が挙げられる。それにみたててこの建築の検証を進める。
すると屋根の形そのものがドラゴンのような又は爬虫類の背中のようにも見えてくる。しかし、その形を表現するためというより、建築的な機能を重視した上での形の選択と素材になる。
神話上のドラゴン退治は通常、剣または槍でそのシーンを象徴している絵や彫刻を街でよく見かける。ではその剣はどのように表現されているかというと、この小塔ということになる。立体十字架はその剣の柄の部分に例えると解りやすい。つまり剣が建物に対して垂直に突き刺さった又は立っている状態になっている。この小塔の内部はサグラダ・ファミリア教会の螺旋階段と同じ手法による非常階段になっており、屋根のメンテに利用されている。

ファサードにある7+1のバルコニーは、覆面または架空の動物の頭もしくは顔とすればより神秘的である。数字の7は黙示録にでてくる7つの頭をもったドラゴン、そして1は隣の建物の脇に設置された3つ目のバルコニーと読み取る例外的なバルコニーとすることで、まさにガウディの気持ちが演出されたところのテラス件バルコニーとして見ると解りやすい。
     
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