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建築家トップ > バルセロナ便り > 第249回

実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

蛇行、螺旋、そして動を表現

カサ・ミラの階段の実測では、さらに蛇行しているので手こずった。つまり円形パティオと楕円パティオでの階段というのは第2計画案であったことを理解した。
通常の螺旋状の階段ではなく蛇行した螺旋状の階段であった。しかもその蛇行に幾何学性があるのかと思えるほどまるで蛇のようにくねっている。そこでどんな理由でそんな螺旋状の階段にする必要があったのかとガウディコードの紐解きをはじめた。
故バセゴダ教授の説明だと、第一計画案は車で最上階に上がれるようなスロープで計画していたと言うのだ。確かに地下階の駐車場に降りるためのスロープは馬車を考えていたようだ。当時バルセロナで最初のロールスロイスを所有していたフェレール氏がそのカサ・ミラの借家人として車を地下の車庫に納めるのに、どうしても斜路にあった柱が一本邪魔になることから、柱を削除する為にファサードの構造計算をし直したというエピソードまであるほどである。
つまり車が利用する斜路を当時から計画に入れえていたことは洞察もできる。パティオの面積からすると少々狭いことから、無理が生じて螺旋状の蛇行階段に計画変更したというのが計画経緯となることが見えて来た。
第二計画案も最終的には2階への階段室となっているだけで、最上階へのアクセスはそのパティオに階段の替わりにエレベータ-が設置され、最上階への階段は、境界壁側の小さな通気用のパティオ側に移動させている。
それでも若干、うねりのある階段の余韻を残している。それに合わせて手すりもうねっているが腰壁の仕上げもまたそれに同調するかのようにうねっているのである。
私はこの階段を実測する時に蹴上げと踏面の実測をしながら写真も撮った。任意の曲線にしたがいながらその階段幅に従って手摺部分も波打っている。どうして階段までが波打つ必要性があるのか、又ここでガウディコードの紐解きが増えた。

作図中の模型作業をするガウディの姿は、描写画家オピッソが描きのこしており、ホワン・マタマラもまた模型作業のガウディの姿を描いているのを想い出す。
マタマラもオピッソもガウディの下で教会建設の作業に従事していた人達である。マタマラは彼の父ロレンソ・マタマラから親子代々ガウディの身の回りの面倒までみていたという模型職人でもあることから、ガウディのかゆい所には手が届くような人達であったわけである。

教会建設の為に大勢の協力者たちがいたが、建築家、ドラフトマン、模型職人、石工、左官、彫刻家など多くの腕利き職人達も集まっていた。中でも彫刻家ホセ・リモーナは19世紀末のカタルニアでは代表的な彫刻家でもあった。私も彼の作品を幾つか見ているがどれも自然主義的であるが腕等の血管の表現が見えたりする超リアリズムな芸術家という方が相応しい。

ガウディの教会建築における彫刻作品は,聖書に基づく演出が反映されている。それだけではなくさらにガウディの指導の下に彫刻の詳細、サイズ、そして形までが指導されていた。つまりガウディ建築作品における動物達や人体でも動的な表現を施している。
     
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