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建築家トップ > バルセロナ便り > 第264回

実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

修復されたコロニア・グエル教会は?

久しぶりに先日日本からの友人が来たのでコロニア・グエル教会地下聖堂を訪ねる。いつ見ても好奇心を掻立てる作品だが、最近の修復ではガウディ時代の雰囲気を削除してしまった。最悪なのは階段の削除だ。
本来教会として計画していたわけだが、その本堂へのアクセスが階段となっている。現在の地下聖堂の上部つまり地下聖堂の前にあるポーチの上部にある階段を登ってのアクセスであった。
私がこの地下聖堂の実測をしていた時には階段が確かにあった。ところが最近の修復工事では雨漏りがするという理由でその階段を削除し、防水加工してポーチの屋根仕上げにしてしまった。しかもその階段入口前には石でアクセスの封印をしてしまった。
まるで未完で登ることはできないと言っているかのようである。

まずポーチの半地下部分を除いて天井の様子と詳細について、友人達とワークショップしてみた。
ガウディのデッサンからすると、このポーチは高架としても利用される予定だったので通り抜けられる予定であったが、何故か表からのアクセスができないように土と石で塞がれている。
天井の三角状にカットされたレンガ仕上げの逆ボールトは今にも落ちそうに内側に垂れ下がっている。どれもがそのような仕上げになっているのが不思議でならない。しかしガウディの構造理念の中で放物双曲面体というのがある。これは放物線と双曲線の2種類の曲線が組み合わせられた曲面体であって、動物達の骨格中でも構成されている幾何学要素であることを、バセゴダ教授から聞いたことがある。
その要素がこの「逆ボールト」というようにしかも階段の傾きに合わせて構築されているのである。
これを見る度に施工当時の事を想像する。
当時の写真では柱が前に立てられている。中には方杖をつけた柱が写真の中にも表れている。
不思議なのは逆ボールトの部分だけは抜けているのである。
つまりスラブは再度の仕上げ手前で構築されるということになる。
ここで考えられるのは、この問題のボールトは面が滑らかなので仮枠で施行されているということが洞察できる。ではその仮枠はそれぞれに柱と柱の間に作ったのだろうかというと、どう見てもそうではなさそうだ。
地下聖堂の施工は1908年以降と記録されているので、その頃の他の工事というとグエル公園、サグラダ・ファミリア教会、カサ・ミラである。
これらの作品の中で注目されるとのはグエル公園の施工法である。
ガウディはその頃、当時では真新しい工法としてプレファブ工法を利用してベンチや高架の施工をしていたことが理解されるようになった。

つまり施工の合理化を図るためにガウディはこのプレファブ工法をこのコロニア・グエル地下聖堂でも利用していたのだろうと仮定してみた。
すると傾いた柱の梁の固定を待ちながら逆ボールトのような不安定な形の施工をするにあたってその中での仮枠工事は誰もしたがらないということも理解できる。
他に残された手段はやはりグエル公園の施工方法を利用したプレファブを応用することにしただろうと考えてみた。

     
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