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建築家トップ > バルセロナ便り > 第265回

実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

サグラダ・ファミリア教会を
石膏模型から作る理由

現在のサグラダ・ファミリア教会でも躯体の一部の窓、壁などはプレファブ工法で作られている。
私が教会の実測をしていた1980年代はじめは5年間毎日のように通った。私の実測は螺旋階段から始めた。その頃、私はまだ教会建築の構造がどうなっているのか理解していなかった。それでも階段を測ることでその構造が徐々に明らかになってきた。
まずは塔の高さ関係からの確認とその階段室周辺についている開口部の位置関係の確認をした。一気に階段全部を測るわけにはいかない。縦に連絡する構造体は重力を感じるからである。
その階段12段分は円を12等分されているので、円の一周分に等しい。その1ダース分の階段に沿った開口部も測った後は模型室にも通った。

この部屋は教会の中でもっとも私の好奇心をそそる場所でもあった。また当時の模型職人との交流も深まった。
特に室長ジョルディ・クッソ氏と副室長のジョセップさんは毎日のように模型作りのコツを教えてくれた。ここでの模型は、基本素材として石膏を利用していた。非常に丁寧なプロセスと処理による模型製作であった。詳細模型などはまるで彫刻である。
つまり彫刻的なセンスがないと模型はできないということも理解できるようになった。この模型室での作業は、唯一ガウディ時代から方法は変わっていないという。白衣をしていなければたちまち衣類は石膏で真っ白になってしまうので、職人たちは全員白衣に着替えての作業をしていた。
私は、この模型室に通うことでガウディコードの謎解きもできるようになった。
特にガウディの作業方法、建築技法、演出、そして幾何学である。
これだけのことが模型製作から理解できるとは想像もしていなかった。
ジョルディ達の巧妙な石膏模型処理は、建築家の作図を読み取りながらそれを立体にする作業となり、時には自分達でも作図をしていた。
つまり詳細の分析をする為の作図作業でありこの辺りは建築施工の施工図を描く作業に類似していると思った。

ある日、ガウディ当時の模型製作の話となり、教会での模型製作は三段階に分けられるという説明を受けた。25分の1模型から始まり10分の1そして原寸模型となる。これらの三段階は全て石膏模型による製作である。
原寸模型は施工する現場での部分模型として現場に設置し、最終模型として修正を加えた後にそこから初めて石にコピーされるのである。
石膏ピースの複製の石に石工がコピーする作業となる。
ここでは石工と模型職人達とのコミュニケーションは密に成っている。
その作業過程を目の当たりして感じたのは、模型製作段階でひな形を作る過程があるが、私は、これがガウディに大きな建築技術の改革的なヒントを与えたとみたのである。
つまりプレファブ工法である。
現場でそのひな形を一つ作ることで同じサイズの部材をいくつも作り出すことができる。

私は石膏模型の経験がなかったのでこの際と思い、実測していた螺旋階段の模型を作りたいとジョルディ達に伝えたところ快く体験させてくれた。
     
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