建築家トップ
 

建築家トップ > バルセロナ便り > 第285回

実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

建築における装飾の役割とは?

歴史的建造物で、建築に何百年もかけられた教会というのは、時代に応じた様式が教会建築の中で共存している。
バルセロナ大聖堂は11世紀から19世紀末までかけて作られていたから、ロマネスク建築様式、ゴシック様式、19世紀末様式とが共存している。
時代の様式を踏襲することで素材利用の仕方や納まりなどで、当時の建築技術や社会状況も見えてくるというと大袈裟だろうか。
組積建築物の場合は時代に応じた様式の増改築をも容易にしてくれる。
従って屋根の形やドームの形なども時代の変化に応じて変えられることさえある。

ここで、ガウディが希求していたサグラダ•ファミリア教会のあり方を見てみる。すると彼はしきりに「理想的」または「より完璧なゴシック建築」として協力者たちに言い残している。それからすると「今まで以上の技術を駆使してより耐久性のあるまた半永久的な作品になる」ことを示唆していたという解釈になる。であるとすると果たしてそのライン上に現在の教会建築は進められているのかということが問われることになる。建築では詳細では装飾的な部分に至っても、同じ精神性が反映されるはずである。
芸術品を作るときというのは作家の卓越した思考性が反映される。そしてそれを見る人たちは、それぞれの解釈で読み取ることになる。私の場合、その反応が実はとても楽しくなるということを、ガウディ建築を通して観察できるようになった。
これを建築演習という言い方をするのだが、日本ではこの分野がそれほど発展していないようである。少なくとも私が日本の学生時代にはそのような科目はなかった。バルセロナのカタルニア工科大学の大学院コースで、その科目を受講した時に気がついたことであった。

ガウディの残した日記には、その芸術についてのコメントがあり、しかも建築の演出としてそのあり方を示している。そこにアイデンティティー、地域、歴史、神話とかの言葉が見られる。つまりその中から歴史性を取り出してガウディの建築の中で検証すると、とても面白い場面が見えてくるのだ。
例えばグエル別邸では鍛鉄のドラゴンの門扉が見られる。これはオーナーであったグエル氏のアイデンティティーの反映として表現されていることは以前にも示唆したが、そのドラゴンがギリシャ神話に登場するドラゴンとカタルニアの神話に登場するドラゴンとを混合させた演出となる、2重の意味合いを持たせた表現方法になっているというと驚くかもしれない。
ドラゴンというのは世界の各地で恐怖や敬意を払われる架空の動物である。西欧においては有翼ドラゴンで悪魔の化身とされる。加えて、ヘスペリデスの園を守衛するラドンと重複した意味を持たせた表現として見てみると、一つの作品の中に2つの舞台が演出されていることになる。
建築演出としての表現となっていることから、それは単に装飾としてだけ捉えると無駄で余計な装飾と見えてしまうが、モニュメンタルなしかも地域のランドマークとしてみるとどうだろうか。つまり何の変哲も無い四角い鍛鉄扉を置くのではなくこのような表現豊かな、しかもモニュメンタル的な表現をすることで通りすがりの人たちは何気なく目ることになり、それぞれの感想を述べるようになる。つまりコミュニケーションの場となる。

これが芸術作品の役目かなと思えるようになった。

どのようなものでも公共的なスペースにあるものは、やはり存在感を醸し出す何かがある方が、より生活を豊かにしてくれるということの裏付けになるということではないだろうか。
     
田中裕也氏プロフィール
 
田中裕也氏へのメッセージ、 感想、お仕事の依頼等何でもどうぞ。
 

←第284回へ

第286回へ→
 
建築家登録と変更   免責事項   利用規約   プライバシーポリシー   会社案内   お問い合わせ
ブライト・ウェイの生活支援ポータルサイト
こそだて」「建築家
 
copyright(c) Bright Way Co.,Ltd.All Rights Reserved.