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建築家トップ > バルセロナ便り > 第287回

実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

私の考えるまちづくり

スペインの夏の風物描写として、観光客が増えることで街が変貌する。
街の人通りもビジネスマン達に替わって短パンや薄着のビジターが大半を占めて歩道が賑わう。今年は、例年になく暑いバルセロナかなと思いつつ、仕事を兼ねて夏休みは実家稚内で過ごしている。
気温は、むしろ肌寒いと思うほどである。潮風を含む空気、食事、気候、日差しは快適である。毎日のようにノシャップ岬の早朝散歩や稚内の沿岸の写真を撮りながらの散歩に興じている。これも実家の本質を認識する大切な要素となると思い、毎日沿岸や市街地をも散策する。中でも幼い頃から見てきた水平線のその眺望は、昔も今も変わらない。

ところがその水平線を見ている本人の中には確実に変化があることを自覚している。まずは年齢である。同時に好奇心だけは益々高まっている。
学生時代までは水平線の向こうは単に外国というイメージだけであったが、今では、その水平線までを具体的に考えるようになった。
実際には樺太がギリギリ見えるか見えないかというところ。少なくとも沿岸が見えず山手の部分だけが数ミリ見える程度である。
つまり距離と被写体は、比例的である。距離が遠のくと被写体は小さくなる。

稚内—樺太間は凡そ43kmの距離となっている。地上1.6mの視点で沿岸から樺太沿岸を見ようとすると山手の頂上部分だけとなる。つまり樺太の沿岸部分は水平線の裏に隠れていることになる。
地球が球体であることから球体の接線部分が水平線となり、その接線までの距離は4.5kmにも満たないということになる。またその裏付けにもなる稚内のノシャップ岬から大岬までの距離が直線で結ぶと約22kmほどでその先端の丘の部分だけが高さは1mm程度見えている。つまり稚内から樺太の陸までの距離からすればバーチャル的に、その水平線を0点とすると沿岸部分はマイナスの位置に陸が見えるということになる。
そんなことを考えながら街の中を縦横無尽に散策する。すると現状の街を見ながら整備しなくてはならないような部分が目立つことに気がつく。

これからの整備をどうするのかというのは自治体や政治体制にもよる。しかしその前に市民の意識も同時に街をよくしようとする関心を高める必要がある。まちおこしというのはそのように地元民の立ち上がりと関心が高まらないことにはどうしようもないのである。
住人達の関心が高まることで自治体がそれをサポートするという構図は、普遍性があり市政や国政もそのように伝統的に営まれてきたことは私が説明することでもない。
そこでまちの劣化は、何が起因するのか。まずは産業である。次にまちの魅力である。そこにはモニュメント的なものがサポートされることもある。芸術性や歴史性、そして民族性もそのような地域にかなったものとして伝統的に受け継がれた祭事的なものであったりもする。

しかもそれは街に同化してコードとなることもある。

私の考えるまちづくりというのはそのようなことを重視してのことである。
     
田中裕也氏プロフィール
 
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