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建築家トップ > バルセロナ便り > 第333回

実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る


カルバリオに隠された最大級のコード

2021年10月22日、久しぶりのグエル公園訪問であった。
現在ガウディ・コードのまとめに必死で向き合っているが、途中グエル公園編で十字架の丘(Calvario)の手前にある4つの岩の並びがどうしても気になっていた。  
この場所には当初 高さ10mほどの十字架を建てる計画をしていた。ガウディはそのデッサンを残しており1929年のラフルスの著書「ガウディ」にもそのスケッチが載せられている。
それが実際には高さ8mの粗石積みでスペードをベースにしたような台形状の構築物としてその計画が変更されたのである。 この構築物はバレアレス諸島に多く見られるタライヨの形に類似する。
つまりガウディが一本の十字架を立てずにこの形にしたのが私の最初の疑問であった。実際にこのカルバリオを何度も見ているうちに、これまでにないメッセージ性の強い高架であることにも気がついた。

このグエル公園の工事は1900年から1914年まで続いたとされている。カルバリオはその中で最後の部分となった。その後はサグラダ・ファミリア教会だけに没頭することになった。そしてガウディは、生涯最後の思いをこのカルバリオに託したのではないかと洞察するようになった。その理由には、まずこの十字架の丘の平面計画のスペードの形にどんな意味があるかということである。
1979年に私が研究の方向性もわからず、ともかくガウディの作品を実測しようと思い始めて最初の頃の実測であった。その頃は現在のようなことは考えることはできずひたすら実測していた。時々体を休めてはこの十字架の側に座って地中海を眺めるのがとても気持ちが良かったことだけを思い出す。実家稚内の裏山で眺めていた景色とダブルほどでもあった。手前に街が見え前方の水平線がくっきりと見えて、気持ちが良くなるというより気が落ち着くようなラインであった。

実測し始めてからそれらの要素を再考し、ガウディ・コードにどんなメッセージとして残していたのかということを1910年頃から考え始めた。1992年のカタルニア工科大学バルセロナ建築学部での博士論文の時には、ガウディ・コードの項目としてすでに250項目は見つけていた。
そしてようやく1918年にはグエル公園の最大級のコードを発見した。それは2018年の京都、全国学士会で私がアカデミア賞を受賞した時の記念講演としてその謎解きを発表させてもらった。
初めに中央門のパビリオンのデザインの経緯から始まり、そして彼の最後の作品となった十字架の丘でのメッセージをどのように解くことができるのだろうかということが見えてきたのが最近のことである。これまで誰も気がつくことのなった実測・作図の方法から実測する対象物の特異性を知ることで同時に作者の意図とそこから洞察することができる作者のコードを読み取る作業である。

ガウディが日誌に記している作品の装飾的な部分についてのコメントについて、指針を厳守した作品作りとなっていることに気がつく。つまりこのカルバリオは、ガウディのアイデンティティーにも匹敵するほどの演出効果がある高架と言えるのだ。

そのコードを理解するには、方位、宗教、歴史、シンボリズム、芸術、文学、建築、幾何学、倫理などにもある程度関心がなければ読み解くことができないと思えるようになった。この3つの十字架の前にある4つの小さな岩は何を意味しているのか。そこからコードの紐解きが始まる。これが理解できないと次には進めないし理解には及ばない。
     
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