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  建築家トップ > バルセロナ便り > 第76回
実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

モノを作る人達が童心に戻るひと時

個人の研究というのは道楽としかいえない趣味の世界である。
その趣味は、なんの評価もご褒美もない自分だけが楽しめる世界である。
私は、オモチャなどの機械類を壊しては中身を見たがる性分であり、細工ごとが好きであった事は確かであった。ただラジオ等元の姿に戻せないのもあった。建築家になろうと志を持って以来、まっしぐらにその道に進んできて45年以上になる。
そのきっかけが、なぜか兄のお土産が住宅のプラモデルであったことを想い出す。

そんな性分が未だに続いているのである。
創作するのが楽しい、何もないところに必要なものを探すのが楽しい。頭脳は創造する楽しさを教えてくれる。それも毎日の訓練が必要だが。
幼い学生時代と未熟な社会人時代を過ごし、自分の創造性に不満を感じて今の行動に走ってきてもう35年になる。3年の予定がこれである。
これも人生の悪戯かな。

それでは竃(かまど)をもった家庭はひっくり返ってしまうのではと思う事がよくある。
ところがそんな人にでも一粒の光はある。それが「希望」であり「夢」である。
その心を大事に育てる事で、どんな事もかなえられると言う事は、こんな小さな自分の人生においても言える事だろう。世間を見ても、昔はウサギが餅つきをしている姿に見えた月に、いつのまにか人間が着陸して本当に足跡を残してしまったではないか。
人間の社会が生まれてから1万年経過したとして、その間に起きた事と日常生活との関わりはどうだろうか。
先日レオナルド・ダ・ビンチの発明展を見て来たが、15世紀の芸術家が自転車や潜水服、飛行機、ベアリング、可動式大砲、釘を一本も使わない木製アーチまで発明している。今ではそれら全てが素材を替えて日常利用されているものばかりである。
ガウディの発明である逆さ吊り構造実験の10年という期間に、恐らくガウディは沢山の事を想像しただろう。その一部はアーチになったり、建築全体の形であったり、家具であったり,「捻る特性」も同時に周囲の自然観察からヒントを得たことは疑わない。
人は自分以外の世界を「信じられない」と言う言葉で表現する。
1つの事に精通することを通俗的に「専門馬鹿」という言葉で表現する人もいるくらいだが、その言葉は、実はその裏には信じられないほどの大変な広がりを持っているということの裏付けにもなる。

ガウディも普通の数倍もの構想をもって建築計画に対処していた。
中には、彼自身でも計り知れないほどの建築を計画して初めて、具体的なプランとして次世代にバトンを渡していた状態になった作品もあるくらいである。
その最中にこのカサ・ミラの作品が位置づけられるということになる。
ガウディの創作活動まっただ中、一日たりとも彼の好奇心と想像力は、彼を休ます事はなかったのではないだろかと思うくらいである。

先日、彼の協力者であった左官、ホセ・バイヨが残した言葉をまとめた本を日本語に訳していた。
「カサ・ミラの計画作業で夜遅くまで模型製作に携わっていた」場面があった。
模型製作は、「モノを作る人達にとっては童心に戻れるひと時である」と言ったら言い過ぎだろうか。

   
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