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実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

膨大な歳月を要したカサ・ミラの点描アイソメ図

ガウディの仕事を請け負う業者としての、ホセ・バイヨフォンの存在は大である。
そのホセ・バイヨがカサ・ミラの模型製作については、「アントニさんが模型職人ベルトランと直接作りました。彼は模型の裏や前をみて「そうそう」と言いそえながら、ベルトランが石膏の器をもってきて石膏をよく混ぜ、さっそくその局面を広げたり、削り落としたりして修正しました」とガウディと友の会の人達との1970年のインタビューで証言している。
彼は当時92歳である。

作図をしながら、私もそのシミュレーションのようにして時々衝動的に模型を作ったりすることもある。
確かに作図する時間は、今では瞑想の時間となり自分の世界に入り込める時間帯である。
それは何よりも楽しく、日常生活を忘れさせる別世界と言ってもよいほどに頭脳のチェンジをさせてくれる。これは新たなアイデアを生まれさせるにはもってこいの手段である。
今でこそパソコンを利用してこのような文章を書くことや、写真などの画像のデータ処理作業も多くなっている。時には細かなデータの操作ミスでフリーズしたりすると、再起動など余計なところで時間を割かれているような気がしているのも事実である。
手作業だとミスってもすぐに修正ができ、その修正は工夫によって時間を短縮できたりするので頭の体操に良い。
現在作業中の巨匠ガウディの翻訳も、はじめに手書きで翻訳を進め、清書ではパソコンに入力することで清書とする。それで三度から四度の見直しをしながら作業を進めてきている。
これを終わらせるまではほとんど製図板に向かうこともない。時々ひどく作図をしたくなる衝動に駆られるが、そのときはキーボードの横に白紙をおいて時々落書きをしたりデザインやスケッチをして気を紛らわせている。

別に誰から請け負った仕事でもない原書の翻訳は、勿論著者からの依頼でもない。
自分自らの勉強としての翻訳作業である。すでに2003年から始めているから何と4年越しの作業である。これもボヘミアンな研究人生と言ったところだろうか。
夜遅くまで翻訳していると、眠気眼に頭の方がボーとして何を考えているのかもわからなくなるほど睡魔に襲われることが何度もある。そんなときは寝るに限るが、どうもしっくりこない。

一方、作図のときは目地入れの作業でも、時には瞑想となるとは言うもののあまりの気持ち良さについコックリと船をこぐことがある。そんなときは素直に寝床について翌日はスッキリとする。翻訳の時はどこか違うようだ。
最近ではどうも体力(耐力)と頭脳が平行していないようである。

カサ?ミラの実測と作図当時は、夢中で点描の全体アイソメ図を描いていたが、そのときは全てペン先が0.1mmのロットリングによる点描作業で、面を埋めるのに異常な時間がかかった。というより歳月を費やした。
その頃は3畳間ほどのスペースに製図板とベッド、そして衣類収納家具があった下宿先の部屋であった。その中での作業は明けても暮れても点描の作業で、小さくコトコトとした音がするだけで、時には眠りこけることさえあったことを覚えている。

   
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