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実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

図面の収まりが悪い=測量ミスも

ガウディは建築様式について、「我は総合性を考え、形式や主要な規模を確立するため、本来の必要性と批評を比較的に検討してきた。我々の時代に必要なのは、更に経済的な方法を検討しなければならないことである。我々の概念において虚弱にならないように、単に方法を考え道徳的な美学的目標を達成しようとすることである。シンプルなその形態はもっとも重要である。」
更に続けて
「幾何学から生まれる形は非常に卓越性があり明確である。
形がより完璧であれば装飾は少なく、彫像による演出的考えは必然的なディテ−ルの浮き彫りであって装飾ではない。
様式の模倣は、表面的な装飾を必要とするが、シンプルなスタイルは良い構造と言える。
美学的構造は、色々な方法の構造を示し問題の解決策を与えてくれる。よく考えられているものは素晴らしく、よりシンプルで気品がある様に思われる。」

と言う事を彼の日誌の中で述べている。
この考えはガウディがまだ24歳から29歳にかけてバイトをしていた時代の日誌の内容である。

つまり、このあたりで既にガウディの建築姿勢が形成されつつあったという事でもあるだろう。
その延長線上にあるカサ・ミラは、彼自ら語るように、建物はシンプルだと思う。
様式や構造が一体化されているのである。
その裏に隠されている素材の扱い方と技法は見事であり、十分に煉瓦の特性と素材の特性を熟知したうえでシンプルで美的な解決方法にしていたといえるだろう。

そのような事を理解するにもやはり、実測して作図をする事で実際の建築の現状が見えている。その詳細の、作図による表現方法にも線画、点描画、彩色画等とあるが、最近では他に吹き付け画やスプレー画等もある。
どの表現にしても、絵の目的を最大限に表現する為の方法を作者は選択する。ボリュームある建築では質感の表現に点描画が相応しい場合が多いが、それに費やされる時間は作図の縮尺とサイズによっては建設工事期間以上に費やされる事もあるだろう。
そうなるとオーナーは嫌がるだろうから人には勧められない手法である。

いずれにしろ作図は第三者が一目で理解できるような絵でなくてはならないはずである。それを考慮しながら作業を進めて来た。
そうすると詳細の収まりが気になる。微妙に収まりが悪い時や、表現に疑問があるときというのは、決まって測量ミスであったりすることがある。
そうなると現場へ直行して実測のし直しとなる。幸い現場が傍にあるのでそんな作業ができるのだが。すると意外な出会いがそこで生まれる事もある。
それまで疑問に思っていた事が理解できるようになったり建築とは関係のない人との出会いがあったりする。これも人生の楽しさだろうか。

このようにしてガウディの建築を測り続けてきたが、彼の住宅建築でカサ・ミラは当時としては時代を超越したような作品であると信じられるようになった。素材の利用法、施工技術、そして建築の彫塑性等がその対象となる。
従来の建築様式を超越した手法として見るより、むしろガウディ様式として評価した方が適正ではないだろうかとさえ思う程に彼の創作性が随所に見られる。

   
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